喫茶「吾眠」新作コーナー

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zoom RSS 2004年Christmas story『パパと呼ばないで』 §0.

<<   作成日時 : 2004/12/25 12:19   >>

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 がた、がた、どっすん!

 もうずっと使われていない暖炉の中で地響きと共にものすごい音がしたかと思ったら、もわっと埃が舞い上がった。喫茶「吾眠」のクリスマスパーティーの最中に起こった珍事にその場にいたもの全ての視線が古ぼけた暖炉へと注がれる。
 パーティーの主催者でもある羽黒那智はもうもうと立ち込める埃に顔をしかめた。店の壁際に置かれた暖炉からテーブルまではそれなりに距離があるので埃がここまで待って来ることはない。それに喫茶店のパーティーとは言っても身内だけで行うささやかなものだ。参加者は彼の家族の他はもう一組、親友である酒匂蒼竜の家族がいるだけなのでそれほど気に留める必要もないのだが、やはりホストとしてはこう言った珍事にはどうしても神経を尖らせてしまう。
 那智以外の皆、彼の妻とその娘、それに酒匂の妻と息子の四人は突然の物音にびっくりして目をパチクリさせている。まったく事態の把握ができていない客を見て彼は小さく溜息をついた。

 こんな騒ぎを起こす奴は決まっている。

 那智はやれやれというように首を振って事態を収拾するべく椅子から腰を上げた。

 薄れていく埃の中でうごめく影が見える。

「皆を驚かすのもいいけれど、いいかげん年を考え……」

 煙突を伝って落ちてきたものに苦笑まじりに話しかけた那智の言葉が途中でとまった。

 どうも、想像していたものと違う……。

 埃のカーテンの内側でうごめく影を見た瞬間、彼はそう思った。
 ゆっくりと薄れゆく埃の中でその落ちてきたものが頭をあげる。
 彼の目に映ったその顔は真っ赤で、金色の目が大きく見開かれており、開け放たれた口には牙、額にはこぶの様な角が存在し、ざんばらな髪をしている。てっきりドジなサンタクロースが侵入に失敗して煙突から落ちてきたものとばかり思っていた那智はその異様な訪問者に少し面食らった。

「どうしたの?」

 暖炉の前に立ち尽くす夫を訝しんで彼の妻、榛名が声をかける。好奇心に駆られたのか、娘の加古が駆け寄って来ようとするのを手で制して、彼は暖炉の前から一歩離れた。

 それは異形の訪問者の姿が皆の目にはいる形となる。

 ヒッ!

 あわてて父親の足にしがみついた加古の後ろで、那智の親友、酒匂蒼竜の息子、龍鳳が息をのんだ。

「ほんとうに来ちゃった……」

 彼はそうつぶやくと、心の中でだけべそをかいた。

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